【大阪府八尾市】適切な相談窓口へ相談者を確実につなげるためのツールの開発・活用

八尾市では、複数の問題を抱える相談者を、適切な相談窓口へ確実につなげ、問題解決を図るための連絡ツールとして、「つながるカード」を開発し実際の相談時に活用しています。自殺は、その多くが追い込まれた末の死といわれており、自殺の背景には精神保健上の問題だけでなく、過労や生活困窮、育児や介護疲れ、いじめや孤立など様々な社会的要因があることが知られています。このような複数の悩みを抱えている相談者は混乱状態にあり、複数の窓口を訪れる気持ちがあっても行くことが難しいという状況があります。そうした状況の中にあっては、複数の悩みを抱える相談者が行く先々の相談窓口にて何度も同じ説明を行うことによる負担を無くすとともに、必要な相談窓口へ確実につなぐことで、相談者の抱える悩みの早期解決を図ることが、将来的な自殺を予防することにつながると考えられます。
こうしたことから八尾市では、相談者の負担の軽減と確実な相談窓口へのつなぎを行うための連絡ツールとして、「つながるカード」を作成しました。八尾市では、「つながるカード」を使用した対応は特別なことではなく、“相談者を確実につなぎ、相談者の困りごとに対応する”という、八尾市職員の接遇の一環として日々求められているものであるという認識のもと、普段の業務に「つながるカード」を取り入れられるように努めています。

なお、本カードを使用することで、以下のような利点があると考えています。
▼相談者にとってのメリット
「つながるカード」を使用することで、次の相談へのハードルを下げることができます。相談者は相談場所や担当者が明確になることで、安心してすぐに次の相談ができるようになります。また、相談者の情報を確実に伝達することで、相談者が同じ話を何度もする必要がなくなり、相談者の負担を軽減することができます。さらに、複数の相談員が支援に携わる ことで、たくさんの問題を相談者ひとりで抱えているという孤立感を軽減できます。
▼相談員にとってのメリット
「つながるカード」を使用することで、関係する担当者同士チームとなって相談者を支えることができます。また、相談の経過と内容が明確になることで、職員の負担を軽減することができます。くわえて紹介先の職員へ相談者が確実につながったことを、紹介元の職員が確認することで、職員のモチベーションの向上につながるとともに、市民の多くが抱える問題との連鎖が浮き彫りになり、今後の対策に活用していくことも期待できます。

カードの使用にあたっては、以下の手順を取っています。
①各所属にて市民(以下、「相談者」とする)から相談を受けた際、さらに適切な機関につなぐ必要があると判断した場合には、相談者にカードについて説明を行います。
※ 相談者に対しては、「相談窓口で何度も同じ説明をすることなく、スムーズに次の相談先へつなぐためのカードです」と説明しています。
②紹介元の所属は、紹介先の所属に相談者から聴き取った相談内容を伝達し、相談者が紹介先へいつ、どの担当者を訪ねればよいか確認します。なお、相談者の困りごとが複数ある場合は、相談者と困りごとの優先順位を確認し、紹介先所属での対応後に次の所属につなぐようにします。
③紹介元の所属にてカード内側の必要事項を記入します。(②にて困りごとが複数あった場合には、カード内側の備考欄を活用しています)また、相談者自身にカード外側の本人記入欄を記入していただけるか確認し、承諾を得られる場合は本人に記入をしていただくようにします。記入終了後、カード内側のコピーを1部とった上で、相談者にカードを渡します。
④相談者に、紹介先の所属にカードを渡すよう伝えます。
⑤紹介元の所属は、相談者が紹介先の所属へつながったか原則、確認します。その上で、庁内便にて保健予防課にカードのコピーを貼付した報告様式を送付することで、情報共有を行います。