荒川区では、地域の救急医療機関である日本医科大学と連携し、自殺未遂者を把握した時点で本人の同意を得て、保健所の担当保健師と高度救命救急センターの専従ケースワーカーとが支援に向けて必要な情報共有を速やかに図ることで、未遂者を必要な支援へとつなぐことのできる体制を構築しています。
本事業を実施することで、以下のような利点があると考えています。
▼区の自殺未遂者の実態が明らかになり、具体的かつ効果的な対策を立てる事に役立つ
▼官民学(自治体・NPO法人・高度救命救急センターや精神医学教室)それぞれの強みを活かしながら、官民学連携で未遂者支援を行なえる
▼自殺未遂者は、早期のケアを必要とする「自殺のハイリスクグループ」であるため、本人に必要な支援を速やかに提供出来る
▼対象者への支援を適宜協議し、必要に応じて関係機関につなぐなどの再企図防止に役立つ
2011年度実施時点での、本事業を通じた主な成果は以下の通りです。
▼対象者32人のうち、約8割(23人)に継続的な支援ができた
▼自殺を未然に防いだり、生活再建につなげたり再企図の防止といった成功事例も出ている
▼H.22~25年までに対象となった60名の中から、その後既遂に至った例はない
▼支援のターゲット層と支援方針が明確になった(例:行政の相談に繋がりにくい若年女性世代への支援をNPO法人bond Projectに委託する等)
▼調査報告書を作る過程で、庁内関係部署だけでなく、外部機関や地域とも顔の見える連携体制が構築され、非常事態の把握や支援ができた
▼事業を継続実施する中で、2012年度以降は東京女子医大東医療センターと未遂者支援の連携を開始したほか、連携先のNPOの団体が増加するなど、取り組みの深化が見られる
▼「支援一体型調査」という全国的にも珍しい取り組みのため、取材や問い合わせ・研修依頼が多数あり、区の取り組みを全国的に発信する機会となった
▼毎月、区・都・日本医大・東京女子医大・ライフリンクで「自殺未遂者支援連絡会」を開催。情報共有や事例検討を通して、支援策を考え、多角的な視点での情報を得ることができている
▼NPOと連携して未遂者支援をする事で、行政では対応しきれない層へのアプローチや相談手段(時間外対応、SNS活用、アウトリーチなど)が増え、幅広い年齢層への支援が可能となった
本事業は、区長主導のもと全庁的に取り組んでいることから、全職員の合意と共通認識・庁内連携をスムーズに図れていることが特徴です。また、NPOのネットワーク力を活かしているため、外部の関係機関ともスムーズに連携が図れています。