足立区では、全庁を挙げて自殺に対する認識と危機感を共有するとともに、どの窓口の職員でも区民のSOSに気づき、速やかに連携・支援ができる体制づくりを目指して、庁内の全職員を対象に、ゲートキーパー研修を実施しています。ゲートキーパー研修を「区職員研修」と位置付け、気づきのための人材を計画的に育成することを目指しています。役職や職種ごとに段階的な研修を行うだけでなく、初級向け・中級向け・上級向けと、習熟度や分野に応じた幅のある研修も実施しています。なお、ゲートキーパー研修は庁内外や職種・立場等の枠を超えた気づきの輪を地域全体に広げられるよう、庁内の職員だけでなく、区民や関係機関職員も対象に実施しています。
本研修を実施することで、以下のような利点があると考えています。
▼全職員が一律に受講することで、あらゆる立場・役職の職員が共通認識と危機意識を持ち、住民の発するSOS に気づき、必要な支援に繋ぐ事が出来る(自殺対策が滞らない環境となり、支援からこぼれ落ちる住民が減る)
▼こころの健康について知識を得る事で、区民だけでなく職員自身のメンタルケアにも役に立つ
▼関係する課・機関・人と連携しやすくなる/役割分担が明らかになる
▼生活者でもある職員自身が率先して研修を受講し、取り組みを実践する事で、事業が区民に伝わり相談しやすい地域づくりが期待できる
▼地域住人や要となる人(民生委員や福祉委員、区長、地域の役員など)にも研修を受けてもらう事で、日常生活で気軽に声を掛けあえる関係や、相談の必要性に気づける環境づくりが期待できる
▼事業を大幅に変えずとも、全職員が自殺対策の視点を持って日常業務に取り組む事が自殺対策につながる
初級・中級・上級研修の内容(概要)は以下の通りです。
▼ゲートキーパー研修・初級編
・対象者:職員・区民
・目 的:自殺への偏見をなくし、自殺のサインに気づく
・内 容:
①講演(NPO 法人自殺対策支援センターライフリンク代表清水康之氏)自殺の現状、状況や経緯、対策や取り組みを紹介
②足立区自殺の実態と生きる支援の取り組み(ビデオ上映)(足立区衛生部)
③気づきのポイントと足立区版ゲートキーパー手帳の使い方(足立区衛生部)
・研修では活動時に使用してもらえるよう、対応のフローチャートや相談者の様子、傾聴のチェックポイント等を掲載した、足立区版ゲートキーパー手帳にくわえて、足立区版相談窓口リーフレットを配布しています。
▼ゲートキーパー研修・中級編
・対象者:係長級職員、相談を受ける窓口職員
・目 的:自殺したいと言われた時、しっかり傾聴し、相談窓口につなぐ
・内 容:
東京自殺防止センター相談員が講師を担当し、「死にたい」と言われた時に、どの様な言葉をかけ、どの様に接し、どこに繋げばいいかを、ロールプレイング形式で学んでいます。
▼ゲートキーパー研修・上級編(多分野合同研修)
・対象者:各相談窓口リーダー・連携関係の機関職員
・目 的:自殺のサインに気づき、関係機関と連携して、いのちを守る
・内 容:
複数要因を抱える人を的確に窓口に繋ぎ、関係者同士が連携して支援出来る様、8 分野の相談内容を学んでいます。具体的には、各分野の専門家にお越しいただき、
①各支援策と相談者をつなぐ具体的な方法
②足立区の「生きる支援」、「いのち支え寄り添い支援事業」について
③民間団体の取り組み:シングルマザーへの支援、フードバンク活動
④生活困窮者支援について
等について講義を実施しています。